子供の対処法
2003年10月16日(水)

場所/国立オリンピック記念青少年センター305号室
進行/遠藤宗一(しじみ)

「子供の対処法」の勉強会は通算して3回目となります。子供への接し方は1010色で、マニュアルは存在しないものと考えなくてはいけません。子供の性格もスタッフの性格もひとりとして同じではないからです。ひとつの問題に直面した際、その解決法も様々です。今回は各スタッフのもつ対処法を出し合い、更に子供へのアプローチの仕方をいくつかのパターンに分けて学んでもらいました。自分にとってどんなやり方が一番うまくいくのか、見つけてもらえれば幸いです。


1.子供の対処に困ったことはありますか?失敗したことはありますか?自分なりにどのように対処しましたか?

スタッフとして子供と接して、必ず1回くらいは「どうしよう?困ったなぁ…」「ヤバイな、マズイぞ」という経験をしたことがあると思います。こんな状況で困った、こうしたら失敗した、こうしたらうまく解決できた、など参加したスタッフたちの経験談を紹介してもらいました。またそれに対するしじみ流の対処法やアドバイス(※印以下)を加えてみました。

○今まで出来ていたことが出来なくなって子供(小6)がくじけてしまった。具体的にいうと、キャンプでの火付けと乗馬がうまくできなかった。火付けのときは雨が降っていた。
→一緒に悔しいという気持ちを共感した。

※失敗の原因を一緒に探してあげましょう。相手が自然や生き物であることを理解させ、いつも必ずしもうまくいくわけではないことを理解させます。相手が小6であれば理解できる範囲だと思います。例えば「馬も人間と同じ生き物だから、機嫌が悪いときがあるのかもしれない。もしかしたら今日は疲れ気味なのかも」など。そして次にうまくやるための作戦をとことん一緒に立ててあげることです。もし低学年であった場合は、180度目線を変えさせて、別のプログラムや遊びを導入させ、落ち込んだ気持ちを切り替えさせるなどして対処してもいいと思います。

○キャンプでの自由時間の際(夕方宿舎に帰ってから)、班の子供がそれぞれやりたいことが違っていてバラバラになりがちだった。
→とりあえず自分の目の届く範囲に子供がいるように注意を払い、別の場所へ行こうとする子供には注意をした。


※遊び終わって宿舎に帰った後の自由時間は、大きな事故や怪我が起こりやすい時間帯です。子供もスタッフも気が抜けてしまいがちな時間なので尚更注意を払わねばなりません。子供を自分の目の届く範囲においておくのは一番の安全策といえます。ただしそれだけでは子供が「つまらない」「おもしろくない」という気持ちを抱いてしまう恐れがあります。そんなときがスタッフとしての腕の見せ所。子供が時間を持て余していると判断したのであれば、何か全員を引っ張りこめるような遊びを提供してあげるべきです。例えば体力を持て余しているようなら範囲とルールをしっかり決めた運動やボール遊び、外へ出かけたいのであればクールダウンをかねた散歩、体が疲れているけど遊びたいならちょっとしたネーチャークラフトなど、スタッフ自身の遊びの選択肢が多ければ多いほど対処はしやすくなります。子供自身は元気なつもりでも身体は疲れている場合が多いので、この時間帯はなるべくクールダウンに努めたほうがよいかもしれません。(特に幼児や低学年)


○現地(プログラム実施場所)までの歩行移動が長く、子供が退屈して「まだ〜?」「あとどれくらい?」の繰り返しになってしまった。
→自分があとどのくらい歩くのか検討がつかなかったので、「あと少しだよ」という言葉にも説得力がなくて困ってしまった。


※まずはミーティング時にしっかりと歩く道のイメージをつかんでおくことです。渡された地図や写真などを予めチェックし、疑問点を払拭するのがスタッフとしての務めです。自分に余裕がないと子供への接し方に影響してしまう典型的な例といえます。移動の道は危険が多かったり子供に集中させなければいけないポイントもたくさんあるため、必ずしも楽しいだけの時間とはいえません。下手に会話をしていて車にぶつかったり、崖から落ちたのでは大変です。ここはメリハリをつけて、現地到着後に思い切り楽しませてあげることを子供に約束しましょう。もし植物に関する知識などがあれば道端の植物を題材に何かできるかもしれません。自分の得意な分野に引き込みながら歩いてみるのもひとつの対処法です。

○子供同士(幼児)がケンカしてしまった。泣き叫んでいて何を言っているのかよくわからない状況だった。
→とりあえず何を言っているのかわからないけど話を聞いてあげた。

※何を言っているのかわからなくても話を聞いてあげるという姿勢をみせるのは大切なことです。その際子供の目線で話を聞いてあげるのがポイントです。大人の目線で見下ろされても子供は心を開いてくれません。もうひとつ大切なのは、ケンカした当事者(4人であれば4人とも)全員から平等に話を聞いてあげることです。もし周囲に関わりのない子供がいるのであれば、悪い雰囲気が影響しないよう当事者を隔離するようにしましょう。他に人のいない場所であれば落ち着くまで泣かせてあげるのもいいかもしれません。

○着替えや荷物整理の進み具合には個人差があり、済んでしまって退屈している子供と時間に追われている子供がいて、班員全員を把握できなくなってしまった。
→自分は遅れている子供のフォローにまわり、他の子供へは部屋から出ないなどの約束事をもうけてコントロールした。


※自分の班の子供の性格や行動力などを前もってもっとチェックしておくことが大事です。集合時、移動時、プログラム中など子供の個性を見極めるチャンスはたくさんあります。遅れることを予想できるのであれば、後から慌ててフォローをするのではなくちょっとハンデをつけて前もってスタートさせればいいのです。そうすればゴールは揃います。荷物の散らかり具合を見て、「君は今から整理しておかないと間に合わないから、今のうちにちょっとやっておこうぜ」ともちかけてみてください。後から自分が困るということを子ども自身が予想し危機感を感じてくれれば、納得して整理し始めるはずです。

○他の班(上級生)がやっていることを見てうらやましくなってしまった。
→自分の班でやろうと決めた約束事があったので、それを子供に納得させた。


上級生や経験班をうらやましいと思うのはある意味大事なことです。自分もああなりたいと思う向上心が芽生えているからです。但しスタッフ自身がまだ無理と判断したり、予めやってはいけないと決められたことであればそのルールを守らせることを優先すべきです。なぜ無理なのか(大抵の場合は身体的な能力によるもの、または法律による規定)を子供に納得させるような説明をしてあげましょう。そして自分たちでやると決めた活動の楽しさを精一杯感じさせてあげてください。

その他まだいくつか事例が出ましたが、以降の項目に共通する部分もあるのでここでは省略します。


2.こんなときどうする?

キャンプやスキー教室などでよく直面する問題シーンをいくつか挙げてみました。そんなときスタッフはどう対処するのでしょうか?自分がその場にいるつもりで答えてもらいました。同様にしじみ流の対処法及びアドバイスも記しておきます。

@昼間元気だった子供が夕方急にメソメソ泣き出した
○身体の調子が悪いかどうかまずチェックして、ホームシックが原因であれば話を聞いてあげる。
○身体の調子やお腹が空いていないかどうかをチェック。そうでなければ泣きたいだけ泣かせる。
○そばにいて慰めてあげる。
○寂しさを忘れられるような遊びを提供する。
○「そうだね、寂しいよね」と子供の気持ちを共感してやる。                       などなど

※まずは涙の原因を探ることから。怪我、病気の類など最悪の事態を想定してから、徐々にレベルをさげて原因を探っていきます。

※ホームシックの対処法も状況や子供の性格によりけりです。ほっておいて疲れさせ、夜よく眠れるようにしてあげるもひとつの手段です。また、「どうしても家に帰りたい!!」と泣き叫ぶ状況であれば、「よし、明日帰ろう!」とその場を切り抜けるのも手です。翌日ケロッとしているパターンが多いからです。もちろん子供の気持ちに共感してそばにいてあげるのもよいですが、逆に「どうしたの?」と心配すればするほど涙が止まらずエスカレートしていく危険性もあります。とりとめない会話によって心が落ち着いていくこともあります。
※先に述べたケンカと同様、他の子供への影響(特に幼児は伝染します)を考えて隔離するのも大事なことです。※泣いているのは子供ががんばっている証拠です。それを認めてあげましょう。

A子供が同じ部屋(テント)の子にいじめられたと泣きながらやってきた
○原因究明に努める。それによって対処が変わる。
○部屋の子供を集めて事情聴衆し、最後はまとまれるようにみんなでゲームをする。
○話を聞いてあげる。
○子供同士で解決できるように見守っている。(スタッフのところに行ったのを見て、いじめたとされる側の子供たちがどう動くのか観察する。)

※まずは泣いている子供に外傷がないかチェックします。そして暴力の有無を確認します。
※原因究明に際しては、当事者の話を平等に聞くことと、周囲の人間(他のスタッフや子供)からの情報を得ることが大切です。自分の班であれば事前の状況や雰囲気から真相が掴めることもあります。もちろんケンカやイジメを防ぐことも大事です。
※話を聞く際は当事者全員の主張を聞いてあげましょう。もしかしたら泣かされた人間に原因があるかもしれません。
※仲直りの握手や、ゲームは最後の最後です。無理やり握手させられても当事者の子供たちが納得できません。
※そのプロジェクトの期間によって、スタッフが手を入れるタイミングも変わってきます。もちろん子供同士で和解できればその後の連帯感や結束力は強くなりますが、その日が帰る日だったとしたら迅速な対処が必要になります。
※同じことを繰り返さないようにすることも心がけておきましょう。

B初めて参加した子供が部屋の中でひとりでボーっとしている
○話しかける。その子が目立つような話題や遊びを提供してみる。
○自分もそうだったよ、と話しかけ一緒にボーっとしてみる。
○見守る。
○他の子とうまく混ざって遊べるようスタッフ自身から他の子の遊びに混ぜてもらい、きっかけを作ってあげる。

※何事もそうですが、まずはその子がボーっとしているのは何故か原因を探ってみましょう。もしかしたらボーっとしているのが好きなのかもしれませんし、その時間はボーっとしたいのかもしれません。そういう場合は邪魔をしないように、また一緒にボーっとして同じ空気を共有してみましょう。
※もし他の子に溶け込みたくてもうまくいかないようだったらスタッフの出番です。しばらく様子を見るのもよいですが、ちょっとしたきっかけを作ってあげましょう。上記のように他の子が注目するような遊びを始めてみたり、スタッフが「おっ、オレとこいつも混ぜてよ、一緒にやろうぜ」と図々しく割り込んでみたり。
※こんなとき子供の間で流行している遊びやテレビ番組、話題を理解していると大変助かります。理解していなくても「えっ?何それ?教えて教えて」と興味を示せば、自然と班の中で輪ができ共通の話題や遊びを見つけ出せるようになります。ひとりでいる子供も溶け込めるようになると思います。仮にその子だけが知らない遊びだったり話題だったりしたら、スタッフが一緒になって教えてもらえばよいのです。

C言うことをきかない(C以下は時間の都合でスタッフからの意見は省略しました)
※まず子供は言うことをきかないものだという認識をもって臨むことです。
※どういうレベルで言うことを聞かないのかで対処が変わってきます。まず生命に関わるような状況で言うことを聞かない場合は強い口調や身体を抑えるなど有無を言わさぬ処置が必要です。そこまでいかない場合、例えば他の人に迷惑をかけて和を乱すようなケースでは、子供と11で目を見て話す、一人だけ隔離して話しをする、或いは敢えてみんながいる中で話をするなどの対処が適しています。
※幼児や低学年は一度理解したことでもすぐに忘れてしまうものです。高学年であれば一度ビシッと言えばわかることでも、小さい子は繰り返し同じことを言わねばならないケースもあります。お互いに面倒ではありますが、辛抱強く繰り返すことも必要です。

Dすぐに暴力をふるう子供がいる
※暴力には意識的なものと無意識的なものがあります。わかっていて敢えて手を出す場合と、感情の高ぶりによってとっさに手が出てしまう場合の2つのパターンのことです。意識的なものに対しては精神的なペナルティーを与えます。例えば「ごはん抜きにするよ」「飴あげなーい」など。その子の好みや弱点をついてみることです。無意識的なものに対しては肉体的な痛みを知ってもらうことも大事です。例えば軽くシッペをしたり、叩くふりをしたり。体罰が問題になることもありますのでよほどの注意が必要です。もちろん話して説得できるのであればそれが一番ですが。

※本人は暴力をふるったつもりはないというケースもありえます。その子の主張も聞くべきですが、実際痛みを受けた子の気持ちや身体をまずはよく把握しましょう。
※スタッフに対して甘えの意味で叩いたり、のしかかったり、ぶら下がったりする子がいますが、スタッフには平気でも子供には耐えられない痛みとなる場合があります。スタッフの反応の仕方によってはエスカレートしたり他の子供に被害が及びますので要注意です。


4.子供と接するにあたって必要なことは?

子供に何かを教えたり、伝えたり、また一緒に過ごすにはスタッフとしてもっていなければいけないものがあります。

@知識・資格
「法律に関する知識」…規則、モラル、リスクマネジメントなどに関すること。例えば単純な例をあげると赤信号が止まれという意味を知らない人は子供を引率できません。あるいはどんな保険に加入しているのか知らなくては事故があった際の対処はできません。当たり前のことですが、子供を扱う上では再認識しなければいけないことです。

「自然に関する知識」…気象、地理、自然現象に関すること。我々の活動では特に重要視しなければいけない分野です。例えば川が雨によって増水していくであろう状況で川遊びをさせたり、地図を読めないまま登山に出かけたり、雪質を知らずにスキー滑走させたり、そんな人が子供のカウンセラーを務めれば悲惨な結果は必至です。

「人間に関する知識」…救急法、人間関係、家族構成、子供の性格に関すること。身体的なことや精神的なことをより深く理解していれば子供の対処にも余裕が生まれます。例えばその子にはどんな持病や常備薬があるか把握しておけば、緊急時の対処の参考となるわけです。

A気持ち・取り組み
スタッフそれぞれの子供と接するときのポリシー、伝えていきたいことをアンケートしました。以下はその回答です。
○みんなが楽しめるように、集団で遊ぶ楽しさを伝えたい。
○自分のことを少しづつでも自分でできるようになること、その充実感を味あわせてあげたい。
○自分の親を大切に思う気持ちを大切にしたい。
○服や身体が汚れても心と自然を汚さないように。
○明るく元気に子供と接していきたい。
○社会や自然の中でのルールを学んでもらいたい。
※ポリシーや心構えに正解や間違いはありません。スタッフの個性や思いを大切にしていきたいと思います。ただひとつ、子供に再起不能な怪我や病気をさせないことを大前提に活動に取り組むようにしましょう。


6.ふりかえり

■今回の勉強会に参加して感じたこと、得られたこと
○子供と接するためにはいろんなことを考えなくてはいけないんだと感じた。
○実際に子供と接した際に学んだことを活かせるとよい。
○いろんな人の対処法を参考にして自分なりの対処法を見つけたい。
○学校の授業よりもよほど勉強になった。
○より子供と接する場があるとよい。


7.まとめ

プロジェクトや探検学校に参加した後、スタッフはものすごく疲れています。それもそのはず、子供と接するということは楽しいだけでなく大変なことも多いからです。今回学んだこと以外にもまだまだ意識しなければいけないことがたくさんあります。事例をいくつかあげてその対処法を紹介しましたが、実際の現場ではそれに当てはまらない予想もできない問題に直面することもあると思います。より多く子供たちと接して経験を積んでいくことが一番の勉強です。最初から失敗せずに何事もうまく解決できるような人はいません。特に相手は「子供」という人格を持った生き物なのですから。今回発表してもらったポリシーや気持ちを大切にして、どんどん子供たちと接していくようにしましょう。

報告書作成 遠藤 宗一(しじみ)