救急法&テーピング技術の習得
2004年3月17日(水)

場所/国立オリンピック記念青少年センター109号室
進行/大友武志(なめたけ)、ゲスト:綾織宏(湘南自然学校)
定期的に行っている救急法の勉強会。この分野は野外活動のみならず、日常生活においても役立つ情報がたくさん詰まっています。同じことでも繰り返し学ぶことが知識習得となります。実際に救急法の対処を施す機会は少なく(怪我人や病人と頻繁に接することはありません)、実践経験がない人も多いと思います。復習の意味もありますが、基本的なことをしっかり学ぶようにしましょう。また今回は、テーピングの施し方を実際に体験しました。
 
救急法のあり方 ※メインアドバイザー大友武志(なめたけ)編

1.救急法の必要性

(1) スタッフとして活動している限り常に、自分が第一発見者になる可能性がある。その時、たまたますぐ側に他のスタッフがいないことを想定する。
(2) 怪我や病気の子供を現状より悪くさせない、安心させることが出来る最低限の知識を身に付ける。

2.ここでいう救急法及び応急処置の位置付け

(1)子供の怪我、病気を自分が最初に発見した(第一発見者)とき、危害を加えずに看護スタッフや自分以上の知識と対処法を身につけている人(救急隊を含む)へ引き渡すまでの時間の過ごし方。
(2)救急法及び応急処置は、治療行為ではない。

3.アプローチと観察

安全な対処が第一である。

4.子供とのコミュニケーション

子供が事故に遭ったり病気かもしれない場合は意思の疎通が困難になることがある。低年齢層の子供は病気の徴候や症状をうまく表現できない。負傷した子供は痛みや恐怖から、年齢より子供っぽい行動を取ることがある。
(1) 即座に近づかない。
(2) ひざまずいたり、座ったりして子供の高さで冷静に落ち着いて名前を呼ぶ。
(3) 子供とは正直に話をする。
(4) 判断プロセスに子供も参加させる様、子供を見て話しかける。

5.救急法(応急処置)が必要な場面に遭遇したらまずすべきこと

(1)他のスタッフへの通報。FA(ファーストエイド:救急箱)を持っている人が望ましい。
(2)周囲の状況の確認。(自分の安全及び二次災害の危険性の把握)
(3)救急法(応急処置)の実践。

6.ファーストエイドキット(FA)

(1) 活動中は誰が持っているのかを知っておくこと。
(2) 何が入っているのかを各自が知っておくこと。
(3) 使用する際の判断は、一人では行わないこと。

7.具体的な応急処置(すぐに生命に危険を及ぼす可能性の小さい軽度の症例に対応)

前提1:年齢区分の目安
成人 8歳以上
小児 1歳以上8歳未満
乳児 出生後28日以上1歳未満
新生児 出生後28日未満
*体格体力により異なる。小児を10歳未満と見る場合もある。

前提2:傷病者に無理強いをしない。話が出来る状態であれば声をかけながら本人の苦痛が一番小さい状態を維持する。(特に処置時の体位や搬送時)

(1)日射病、熱射病
・ 日射病(熱疲労)が熱射病に進行する可能性がある。

(2)出血
・ 直接圧迫止血法と関節圧迫止血法の違い。
・ 間接圧迫の例(脇の下を締めて手首の脈を止めてみる)

(3)やけど
・ とにかく冷やす(流水がベスト)

(4)鼻血
・ 出る血は無理に止めない(体内にためないようにする)

(5)ハチにさされたら
・ おしっこ(アンモニア)は無意味

(6)喘息
・ 不安を和らげる(精神面のケア)

(7)傷
・ 流水で洗う(清潔にする)
・ 透明な消毒液(マキロン等)を使う
・ ナイフ、鉛筆、棒などが刺さった場合は、抜き取らない
・ 感染症(破傷風)等に注意する

(8)低体温症(ハイポサーミア)
・ 唇の色(紫色)に注意。子供は震えない場合がある
・ 体の芯が35℃以下になると危険
・ 風と水から保護し、それ以上の体温低下を防ぐ(サバイバルシートの活用)

(9)腹痛、吐き気、頭痛等
・ 子供によっては精神面の不安から症例を訴える場合がある
・ 緊急を要する病気の場合か、精神的なものかを見極める判断が必要(判断は自分ひとりで行わないこと)
・ とにかくしばらく安静にする
・ 内服薬は極力使用しない(副作用や、アレルギー反応に注意)

(10)骨折、捻挫
・ 骨折か捻挫の判断が難しい場は骨折として扱う(判断はしない)
・ 患部を冷やし、固定する
・ ひねっている場合は無理に元の位置に戻さない

*ショック症状
・ ショックはあらゆる怪我、病気(特に出血、虫刺され、やけど)の時に現れる
・ 体細胞への酸素供給の不足から起こる(親指の爪を押し、2秒以上経過後も色が戻らない場合は酸欠)
・ 症状が進むと失神
・ 脱水症状が伴うときは、少量の水分を与え、安静にする

参考まで
(1) EMPジャパン『小児メデック・ファーストエイド』
(2) 小学館『アウトドア救急ハンドブック』
(3) JTB『知っておきたい野山歩きの常識』
(4) 東京新聞出版局『登山の医学』
(5) 財団法人東京救急協会『応急手当』-上級救命講習テキスト-
(6) 講習会は、日赤、消防署、EMPジャパン等の主催がある。

* 東京消防庁では、普通救命講習3時間、1000円、上級救命講習8時間、2200円を随時、各地で行っている。HPに案内あり。

財団法人東京救急協会が提唱する応急手当用品

品名
感染防止用 人工呼吸用マスク ゴム手袋
固定・創面
保護用 三角巾 滅菌ガーゼ
ばんそうこう 巻き包帯
梯状副子(ていじょう)
搬送用 担架 毛布
看護用
医療薬品等 体温計 アルミックシート
洗眼器 はさみ
ピンセット 薬用石鹸
器材消毒用エタノール 指手消毒薬
創面消毒薬 懐中電灯
収納かばん(救急箱)
家庭用常備薬(解熱剤、胃腸薬、風邪薬等)
*滅菌された器材や医療品は、有効期限の定期的なチェックが必要。


テーピング実践講座 ※ゲストアドバイザー綾織宏(まるお)より

1.応急処置の基本(怪我をした場合)

@REST(安静)…怪我をしたらまず安静にするのが基本。無理して運動すると悪化させることになる。骨折、捻挫の場合はギプスや副木を使って「固定」する。

AICE(冷却)…捻挫や打撲、骨折などの怪我をしたときはすぐに冷やすことで、腫れを抑えることができる。アイスパ
ック(氷嚢)、氷を入れたビニール袋などを使用。

BCOMPRESSION(圧迫)…冷却と同じく、腫れと内出血を最小限にとどめることが目的。

CELEVATION(挙上)…患部を心臓より高く上げることで、腫れを早く抑えることができる。

以上が怪我をしたときの応急処置の基本「R・I・C・E処置」です。これはどんな怪我にも当てはまります。

2.早期回復(怪我)のための処置

@患部を温める…ホットパックや風呂で身体を温め、血行を促進する。

Aマッサージ…マッサージによる血行促進作用により、血管が老廃物を吸収する。

Bリハビリ…怪我前の状態に戻すため、柔軟性や筋力の回復に努める。

Cテーピング…リハビリ中や競技(スポーツ)、日常生活への復帰時、患部のテーピングによって怪我の再発を防止する。

腫れや痛みが引いたら、毛細血管を拡張して、血球やリンパ球の流れを促進させます。傷ついた組織に栄養を送り、廃棄物を吸収して組織の回復を早めます。

3.テーピングの目的

上記、回復のための処置にも登場した「テーピング」。そのテーピングに関する基礎知識を紹介します。テーピングは正しく行うことで大きな効果を発揮しますが、決して「怪我を治すための万能な方法、治療法ではない」ことを念頭に入れておきましょう。また誤ったテーピングの処置は、症状を悪化させることもあります。以上、繰り返しになりますが、救急法と同様でテーピング処置も、「治療行為ではない」「間違った知識と処置で患者に二次災害を加えてはいけない」というのが大前提になるのです。

@怪我の予防
怪我をしやすい部位に予めテーピングをして怪我を予防する。

A応急処置
怪我をした直後、患部を固定・圧迫しておくことで悪化を防止。前述「COMPRESSION(圧迫)」に相当する処置のひとつ。

B再発防止
現在怪我をしている、もしくは以前怪我をした箇所の悪化及び再発防止にテーピングをする。日本では再発防止にテーピ
ングが多く用いられている。

4.テーピングの効果

上記「テーピングの目的」をもう少し具体的に説明すると以下のようになります。

@関節の可動域の制限
関節が通常の範囲を超えて動くと、捻挫や脱臼が起こる。これを防ぐためテーピングで可動範囲を制限する。

A靭帯や腱の補強
靭帯や腱が故障で弱くなっているときにテーピングで補強する。

B患部の圧迫・固定
テーピングによる圧迫で、腫れや内出血の広がりを防止する。また固定すると怪我の悪化防止、痛みの緩和になる。

C精神的な安心感
テーピングは怪我をする可能性を大幅に減らすことができる。これにより怪我への不安も少なくなり、スポーツをはじめとする様々な活動に集中できる。

以上の基本的な知識を学んだ上で、今回は基本的なテーピングの巻き方を覚えました。今後、テーピングのバリエーションやテーピングを施す際の注意点なども紹介していきたいと思います。

まとめ
 
救急法及び応急処置を学ぶ第1歩は、「誰でもできる」ことを「間違いなく行う」ことです。しかし誰でもできることでも、救急時になると、その当たり前のことができなくなってしまうこともあります。正しい知識や技術の習得は、救急時においても冷静な判断ができ、自信を持って行動することに繋がります。基本的なことを繰り返し学んだ上で、今回のテーピングのように少しずつ専門的な、また一歩進んだ知識や技術も身につけていければ、と思います。

報告書作成 遠藤宗一(しじみ)